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●原さん歓迎SSまとめ●

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●投稿者 : 是空@藩王

さて、調子にのってた藩王ですが、何を書いても開示事項に触れることに気付いた。

だいたい新妻も記憶喪失も師匠もなんもかんも触れるやないか。
(ここで注意してもらいたいのは、別に素子の記憶が無くなったから横から掠め取ったとかそういう話ではありません)

さて、困った……で、ひとつの現実を見る。
素子が俺の国に来てくれた。それだけでいいや。

のちに、原素子入国がFEGの未来を大きく揺り動かす「あの事件」の始まりであったことは他国の星見によって語られることになる。

to be continued
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●投稿者 : サーペント

国民達が人垣を作って迎える中、私達の国、FEGに原素子さんが来訪されました。
藩王自ら手を引いて案内中です。後ろには大勢のBALLS達がくるくる回りながら付いてきています。
私はこの一年温めてきた挨拶を放ちます。
「こんにちは、はじめまして、まずは礼を言わせてください。会った事は無いですが、私の主観では去年、貴方とBALLS達に友人を助けてもらった者です。ありがとう、そしてようこそFEGへ。
我らは貴方達の来訪を歓迎します!どうぞ楽しんで行って下さい!」

一息に言い切ると私は後ろでに持っていた花束を渡して歩いていった。
暫く歩くと途中から付いてきたBALLSたちに話しかける。
「ふー、緊張したー、まあでも、喜んで貰えたみたいだし、良かった。さて、君たちにも礼を、花束の代わりに磨かせてもらえるかな?」
BALLSたちは喋れないが、何か喜んでいる様に思えた。
「ああ、この国に来て良かった。ずっと言いたかったんだ、ありがとうって。」
私は微笑むと早速手近なBALLSを丁寧に磨き始めた。
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●投稿者 : K2@わかば

その日はお祭りだった。
F.E.Gすべての国民がもろ手を上げて一人の女性の訪問を歓迎していたのである。
女性の名は原素子。
いわずと知れた女傑である。

さて、ここに一人の兵士がいる。
カルナという小柄な猫士で女性ながらパイロットとして務めていた。
小柄な体躯と愛嬌のある表情で周囲からはマスコットのように扱われることもあったが、

もちまえの運動能力とセンスにて立派にパイロットを務めていた。
しかし、この少女。見かけとは裏腹に腹が黒い。
今回も「美人さんだなぁー」と、のほほんな笑顔でかわいらしいしぐさを取りながらも同時に「プロマイドとか売れるかなぁ」とか考えていたりした。

そして、それをためらわず実行に移してしまうあたりがこの少女の一番の問題点であった。

持ち前の運動能力を活かし、こそこそと小型カメラをもって忍びより写真を取ろうとしたのである。
「どきどき」こそこそと他人の後ろに回りこむ姿は不審者そのものであるが、その愛嬌あふれる動作は周りの人物の目じりを10度ほど下げるだけで、疑惑の目で見られない。
このあたり、カルナはかわいく生んでくれた母に感謝すべきである。

さて、そうしてじわりじわりと近づいていったカルナではあるが、寸前でもって大ポカをやらかした。
小柄な体が災いしたのか、それとも周りの原への熱気が予想以上だったのか。
人波から突き出されて、ターゲットの前で大ゴケしたのである。

それはもう、ずるべたーんという音が響き渡るほどに。
思わず止まる時間。さっきまでの歓声が凍りつき、あたりは静寂に包まれる。
そして、カルナの目から膨れ上がる涙。
「うわ、泣いてしまう!」とまわりがおののくなかで、すいと優雅な動作で近寄る人物が一人だけいた。カルナのターゲット、原素子である。

ふわっと軽く抱き起こし、カルナに目をあわせ微笑むとこういった。
「大丈夫?」

ずどん。

その瞬間、カルナはノックアウトされた。
自分の黒いたくらみも忘れ、転んだ痛みも忘れ、ただただ目の前の美しい女性の笑みに引き込まれたのである。

こうして、また一人原素子の熱狂的ファンが生まれた。

これは、そんな原素子歓迎セレモニーのワンシーンである。
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●投稿者 : 芹沢琴

〜〜〜琴ちゃんリポート ○月○日

 その日は、盆と正月と、その他お祭り関係をまるごと1日に収めたかのような騒ぎだった。
 
『彼女』は藩王にエスコートされ、城に入っていく。まあ、藩王メチャクチャ鼻の下伸びそうになってるのこらえてる。
「わぁ、あの人が・・・・・・・・・・・・・・・」
「凄い、綺麗・・・・・・・・・・・・・・・」

 我が国の人々の反応も人それぞれ。
 藩王と同様、彼女に憧れてたらしい殿方が、我先にと彼女の元に駆け寄って、花束なんか渡してる。藩王、嫉妬むき出しになりそうなのをまた『彼女』の手前、必死でこらえてる。体に悪そう。

 我が国の優秀な整備士さん達も、歓迎の言葉と一緒にやって来た。手にはうちのI/Dの設計図。・・・・・・・・・ああ、『彼女』は整備の天才と呼ばれた女性。その彼女から直々の指導を受けたいというのはメカニックにとって相当な喜びかもでしょうしね。・・・・・・・・・私が最高に面白い同人誌をたまたま行った場所で見つけたような。あれ? 何か例えがおかしいかしら?
 あらあら、あそこにいるのは小鳥遊さん。手にはマジック持ってらっしゃるわ。彼の目線の先には・・・・・・・・・・・・・・・『彼女』と一緒にやって来たBALLS達。ああ、そういえば「ああ、BALLSっていいよなぁ。欲しいな〜」って言ってらっしゃってたものね。『彼女』に交渉して・・・・・・・・・・・・・・・おお、早速1人の子ゲットしておヒゲを書き始めた。「○○〜〜〜」名前も付けたのね・・・・・・・・・・・・・・・・。
 さぁて、私もこうしちゃいられない。
 手に持ったものを持って、私も『彼女』の前にはせ参上する事にした。

「はじめまして、原素子さん。アンドBALLSさん達。F.E.G.でパイロットを勤めさせていただいている芹沢琴と申します。貴殿の入国、心より歓迎させていただきます。つきましてはこれは、ほんのささやかな歓迎の品として受け取っていただけないでしょうか?」

 渡したのは、白いチャイナドレスの原さんと、黒ジャケットにサングラスの3割り増しかっこよく書いた藩王の絵。
 藩王に向けてもにっこり微笑んでみせた。

 また、この方からも色んなお話聞かせていただけるといいな。とそう思った。
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●投稿者 : たぐ

『ようこそ! 原素子さん!!』

大きな垂れ幕が下がっている。整備工場にだ。
今頃街はもっと大賑わいなんだろうなぁと思いながら何故か紛れ込んでいたBALLSに話しかける。

「君はいいのかい?原さんと一緒に居なくて?……迷った?なら少し待っててくれ。案内してあげるよ」
肩の駆動確認。よし、問題無し。

BALLSは言葉を発していないが、何となく伝えたい事は分かる。
原さんは藩王が自ら手を引いて国を案内していた。とりあえず藩王の所に行けば原さんに会えるだろう。

「この国の熱気に驚いたかい?はは。そうだろうなぁ。でもそれだけここの国民は皆原さんを歓迎してるんだよ」

オールチェック……、メンテ終了。コンディション、オールグリーン、と。

「待たせたね、それじゃあ、行こうか」
肩にBALLSをひょいと乗っける。……お、バランスいいや。

「ああ、分かるかい?実は僕物凄い緊張してるんだよ。だから体のチェックしてたんだ」

外へ出ると、思っていた以上に街には活気が溢れている。その一区画、大きな人垣が見えた。すぐ見つかった。

「あそこみたいだね。先に行くといいよ」

ピョコン、とBALLSは肩から下り、人垣の方へ跳ねていった。

一つ、深呼吸。

人垣の中心へ行き、挨拶を。

「ようこそ! 原素子さん!!我々FEGは貴方方の来訪を心より歓迎します!」
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●投稿者 : 金村佑華

〜金村佑華さん原素子さんに謁見するの事〜

 うわあ。
 まず佑華は一言つぶやいた。
 うわあ。ナイスバディ。

 ・・・・・・・・・・まずはそこか。

 最近、佑華は藩王がいそうなところで「相乗り相乗り〜」と駄々をこねている。ゆえに、今はパイロットの訓練を受けている真っ最中なのだが、問題があった。
 金村佑華は、寸胴であった。
 パイロットスーツは、装備が付いているとは言えど、体のラインが露骨に出るものである。
 ゆえに。

 こんな姿見られたくない〜!!

 相乗りの夢を持ちつつも、そう考えて、一人FEG一周マラソンをしてぶっ倒れている生活を送る中、このような美貌のお方が現れたら、そりゃあもうヘコむ。

「あのう、原さん・・・・・・・・」
 佑華はおずおずと歓迎する国民に囲まれる原さんに近づいた。
「どうやったら原さんみたいなナイスボディになれるんですか?」
 是空藩王、微妙に「後で覚えてろよ〜」と歯をギリギリしているが気にしない。
「そうねぇ、恋をする事かしら?」
 是空藩王、急に元気になる。
「恋して、それだけ?」
「恋したら努力するじゃない。それこそ、人の何倍も」
 佑華、少しだけ元気になる。

「誰にかは知らないけど、頑張りなさい。ヘコんでる内は努力が足りないのよ」
「は、はい!! ありがとうございます!!」

 佑華はぺこりとお辞儀をした。
 原素子さんは、恋する乙女の味方だ。
 うん、原さんの為に頑張ろ、そうしよう。

 佑華はスキップしながら人ごみに消えていった。

 原素子さん、ようこそ。
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●投稿者 : 鈴木会陽

〜ようこそ原さん〜

原さんが来る

この一報がくるやいなやFEGは大騒ぎである。上は藩王から下は国民まで歓迎で大急ぎである。そんななか頭を抱えた馬鹿がいた鈴木会陽という…突撃と偵察が得意というが本当に得意かどうかはとても言えない男である。
「だめだ、原さんの歓迎するのに何も出来ない」事実この男、絵の才能が笑えるほどなく簡単な地図くらいしかかけない。
「よし、こんなときこそ偵察だ。まず敵を知らなければ」
そういっておしいれから原さん初出演のゲームを取り出す。もちろんガンパレードマーチである。
「本人を喜ばすには本人出演のゲームをやってみようじゃないか、さぁ偵察開始ぃー」

歓迎式典で鈴木会陽は変わった格好をしていたおそらくFEGいやにゃんにゃん共和国でもこんな格好をした奴はいないだろう。ずばり、ハッピとはちまきだ、背中には原素子ファンクラブとあり巨大すぎる旗には「ようこそ原さん」とある、サイボーグの腕力とドラッガーによる強化を無駄に使い振りはじめた。
盛大な勘違いをした馬鹿は大声を上げ始めた
(原さんの故郷にはファンクラブがある、ならこちらFEGにも作り原さんを歓迎しよう)
正確な情報を仮に手に入れても間違った方向へ突撃するのがこの男の特技である、
「歓迎しまーす、はーらーさーんー」
この後藩王にファンクラブ設立を嘆願したというがその後の顛末は定かではない。
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●投稿者 : 広瀬都

「原さんと感動の再会かぁ……」
 明け方の政庁城。その執務室の中──。
「是空先輩ときたら」
 今は王と呼ぶ人物を先輩と呼んでいた頃のことを思い出したのか、それとももっと別のことを思い出したのか──おとなしやかな顔をした長い灰色の髪の女はキーボードを打つ手を止めると、少しだけ遠くを見るような目をした。……そして、首を傾げた。再会はいいのだけど、あの後一体何があって、どういう経緯でこの国に来ることになったのだろう。彼女──広瀬都──は王に付いてこの国に来ただけあって、それなりに情報は得ていたが、それでも彼と彼を取り巻く人間には謎が多かった。
「……」
 ……ま、いいか。テーブルの下から聞こえてたうにゃうにゃともむにゃむにゃともつかない寝惚け声に自分が独り言を言っていたことに気づき、都は少し赤面すると、仕事を再開した。今は自分にやれることをやるのみ。他のことは後、後。

 ……隠れと隠れじゃない原さんファンを是空王が大人げなく牽制しに行かないように是空王にはギリギリまで仕事を押しつけて……ああ、ダメかも。あの人ならどれだけ押しつけようとやってのける気がする。記念グッズ販売の許可申請書類はこっちにまとめて……ああ、もう。なんでこんな行き当たりばったりなんだろ。……猫だからか。お茶の用意もしたいな。出来たら自分で。

 その数時間後──。
 賑やかな出迎えを遠く政庁城の窓から双眼鏡で確認し、都はかすかに口許を綻ばせて呟いた。
「原さん。BALLSの皆さん。フィールド・エレメンツ・グローリーへようこそ」
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●投稿者 : とよのか苺@わかば

○月×日昼下がり


表の通りがやけに騒がしい。お客さんもなんだかうきうきしてるみたいだ。

この国に来て数週間、アルバイトとよのか苺はコンビニのレジ打ち(自給格安だがこれはこれで結構楽しい)をしながら考えた。

お祭りかな??でもいつもともちょっと違うみたいだし・・・

そう思ってカウンター横の新聞(商品)をひょい、と取る。各紙一面に大きな見出しが載っていた。

「そっかぁ、ついにいらっしゃったんだぁ・・・」

政庁では大騒ぎなんだろうな。普段はとっても頼もしい藩王さまを思ってちょっと微笑う(おめでとうございます)。
お仕事が終わったらお城に遊びに行くことを心に決め、とりあえずドアの開く音に「いらっしゃいませ!」と挨拶をした。
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●投稿者 : イクト

ようこそ原さん!!


この日、国中でお祭りがおこなわれた。

要約すれば《VIPをお迎えする式典がおこなわれた》となるがそういう規模に終わらなかった。
なんせ規模が文字道理国中である。廃墟から整備工場まで完璧なデコレーションがされた。
あちこちに見かける横断幕からのぼりまですべてに「ようこそ! 原素子さん!!」とかかれていた。
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年代もののラジオがノイズ雑じりにDJの声を流す。
『本日は、予定されていたすべての番組を中止して原素子さんの歓迎放送をおこなわせていただきまーす』

『えー、何でもこの原さんは優れた整備士であるんだとか。生憎なことに他のイベント目白押しのせいでこの番組には出演していただけませんが、原さんについて今日は特集しちゃいまーす。なお歓迎の言葉、式典であった面白エピソード速報などはFAXでどしどしお願いしますねー』

『えーと、なんでも原さんは高機動幻想ガンパレードマーチにおいてその容姿、言動などあらゆる要素によっておおくのPC、NPCを魅了しファンクラブまであるとか。またカッターナイフの一突きはミノすけ以上にPCを殺害。でも、そこがまた…って誰だこの原稿書いたの!?私、お上につかまっちゃったらどうすんのサー!?』

『えっと、失礼しました。尚、先ほど原さんの姿に感極まった人が抱きつこうとしたところ、虚空より飛び出したこわーいバンダナしたお兄さんに踏みつけられるという事件があったとFAXが来ています。皆さんも軽率な行動はお控えください。』

『ここでFAX読んでいきまーす。えっと匿名希望さんからです。うちの藩王は国民、非国民問わず果てはわんわんにまで知られる、原さんのファンですがそもそも原さんからはどうなんでしょう。告白したはずなのですがOK?それともNO?でもその後の式神A-DICに恋が終わったとかあったという報告も…実際どうなのか気になるところです。おいおい発表されていくんでしょうか?』

『さて、次は原ファンクラブ会員さんからです。原さん、今日はこの国に来ていただいてありがとうございます。ところで藩王、何時の日か貴方から原さんを奪い取ってみせる。首を洗って待っていろ…ってだから私の身が危なくなるようなことは言わせんなー!!来て下さって喜んでるのは分かったから言葉を選べー』

『またしても取り乱してしまって失礼しました。次は歌ギツネさんからですね。原さん、この国に来ていただいてありがとうございます。後ろを付いてきている小さいのかわいいですね。いくつかお持ち帰りしたいくらいです。ああ、かわいいですよねー。BALLSたちは藩王とも縁が深いようですねー。』

『はい、番組はまだまだつづきます。皆さんからのFAXお待ちしていまーす』
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●投稿者 : ろーす@わかば

「おおお…」

いままで有名人らしい有名人(藩王くらいです)にはほとんど出会ったことがないろーすは、ただただ呆然とするばかりだ。
あの、あの原さんが本当に来るとは思わなかったのである。
ろーすの横を大勢の人が走っていったが、全く気にならない。
そのろーすの頭の中では原さんならぬ、ペンギンさんで頭が一杯になていた。
さらにその中の一体のBALLSが肩に飛びついたところで、やっとろーすは肩に何かがいることに気付く。

「これはBALLS……原さんと一緒に来た子達か。迷ったのかい?」

ろーすはこういう時誰が相手でも信念というものを忘れない。
多少動揺してはいたが、笑顔だけは忘れなかった。
ろーすの言葉を聞いた瞬間にBALLSは思い出したかのようにろーすの肩を降りて、走り出す。

「…そこに行けって事かな…多分。」

BALLSに促されるようにその方向へと走ると、そこには見慣れた姿の藩王と、見慣れない美女…つまり、原さんがいた。
胸の高鳴りを抑えるように、深呼吸しながら、いつも通りろーすは信念を貫く。

「ようこそ原さん、フィールド・エレメンツ・グローリーへ。」


この日、いつかペンギンとBALLSもいつか家で飼おうと、心に誓ったろーすであった。
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●投稿者 : 高梨ひひひ 監修協力:一井号太(内容のチェックと修正)

『抜け駆け禁止』

――FEG今週の標語より

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整備場は、というか整備や開発にかかわる人間はすべて大混乱していた。
『整備の神様』と呼ばれる原素子女史がFEGにやってくるという情報が流れたため である。
会って教えを請おうと考えるもの、自ら開発した機体に助言を得ようとするもの、なんとか是空藩王を出し抜いて親しくなってやろうとするものなど、思惑は様々であるにしろ、戦争のとき以上に目がぐるぐるしているのは間違いなかった。

そして、ここはFEG飛行場の一角。

「というわけでこれが新型試作機【ネコマ・シグラー1号】です。今までに存在した
あらゆる航空機のスピードを超え、すべての戦況に対応することができるんですよ」

自信満々の口調で機体を語るのはFEGの開発者筆頭(自称)一井号太である。

「そ、それはすごい!そんな機体が開発されていたなんて知らなかった…」

似合わないパイロットスーツを着込んで一井の前に立つのは高梨ひひひ。
色々自業自得の失敗をしたあげくにリストラ候補にあがり、割と焦っている男である。

「歓迎の航空ショーでお披露目しようと思いましてね。」

「なるほど、そして原さんを迎える前にテストパイロットとしてこの私が呼ばれたわけですね!」
「まあそういうことです。ただし極秘プロジェクトですので誰にも言わないようにね」

極秘とかプロジェクトとかいう言葉にはめっぽう弱いひひひである。

「これが完成した暁にはひひひさんも原さんから認められることは間違いありませんね」
「極秘プロジェクト…それだけ期待されている…共和国の未来…ヒーロー…原さん…」

すっかりその気のひひひは言われるまでもなくコクピットに潜り込み、操縦桿を握る。通信機のセットアップ。

『操縦方法は従来のものと変わりません。反応がピーキーなので気をつけてくださいね』
「ラジャー。この大空は俺のキャンパスだ」

カッコいいことを言おうとして割と微妙な台詞を吐きながらメインエンジンに火を入れる。
爆音を撒き散らしながら力をためるネコマ・シグラー1号。

「高梨ひひひ、就職活動がちょっぴり不安な21歳!吶喊しまーす!」

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『高梨ひひひ、就職活動がちょっぴり不安な21歳!吶喊しまーす!』

ひひひの興奮しすぎてちょっといっちゃった声を聞きながら、一井は通信機の前に立っていた。

「いやあ、こんなに簡単にテストパイロットが見付かるとは思わなかったなあ…」

今回探していたテストパイロットの条件。

1.上層部にバレない 2.適度に頭が悪い 3.頑丈

腕とかは割とどうでもよかったらしい。
そして早速、ひひひから通信が入った。

『いいいい一井さっさんんんん!こ、これGがががががが』
「ひひひさん、あなたならできます。私はそう信じています」

すでに用意してあった台詞を読み上げる一井。
とんでもない加速性能をもつネコマ・シグラー1号だがそれもそのはず。
とにかく早く設計をあげることを目的にしたため、この機体居住性は0なのであっ た。

「で、スピードメーターはどうなってますか?機体の調子は?」
『すぴー、スピードは出てますけどひっ非常に揺れます!機体もギシギシ不安な音がぁ』
「坊や、それは枯れ葉のざわめきです」
『お父さん!お父さ…って!!大丈夫なんですか!!』

スピードのために軽量化しすぎたか、とメモを取る一井。
空気抵抗のことも考えて今度は形状ももっと考えよう。

「では旋回してみてください」
『りょりょ了解…!ふぬ、操縦桿が硬…(ぼきり)』
「…」
『…』
「…どうしました?早く旋回してください」
『…いいいい一井さん!?折れたんですケドーー!?』

絶望的な声が通信機から漏れる。
ちなみに機体はFEGの彼方へひたすらまっすぐ進んでいる。
10秒ほど考え込む一井。

「そんなはずはありません。俺の科学力は完璧ですよ」
『現実に折れてんだろーーー!!』

考えた結果の台詞であった。

「しかたない。じゃあ減速して適当に不時着してください」
『く、くそ、なんでこんな…ってアレ?』
「どうしました?」

少年マンガでいうところの『!?』という擬音を張り付かせて焦るひひひ。

『一井さん。操縦桿が折れている場合はどうやって不時着すればいいんでしょう』

焦りすぎて逆に落ち着いた口調になっている。今度は15秒考えた。

「脱出装置を使いましょう。その機体は脱出装置も最新です」
『き、緊急脱出もパイロットの華ですよね!!』
「その通りです。その機体に搭載されている脱出装置は軽量かつコンパクト。座席の下に入っています」

得意げに説明する一井。よほどの自信作らしいが。

『座席の下に………………………………』
「どうしました?」

突然無言になるひひひに焦りを覚える一井。まさか搭載を忘れていたかと本気で不安になる。

『これ…ですか?』
「これというのがなにを指すのかは知りませんが。まあ座席の下にあるのは脱出装置だけですよ」

どうもひひひには脱出装置がそれに見えなかったらしい。正式採用の暁には『脱出装置』と明記しよう。
うんナイス俺。

『ガガガ一井さピーこんなのザー』
「ああ、これ以上飛んでいくと通信の範囲外になってしまいますよ」
『ガガガガー。ピー。呪われろ…!ブツッ』

通信が切れる。どこか遠くで、花火のような音がした気がした。

「この前見た世界忍者のアニメではうまくやってたんだけどなぁ…まいっか。原さんグッズの準備始めよう。っと、その前に…」

おもむろに携帯電話を取り出し、警察にコールする。

「ああもしもし、いえ、単なる善良な国民ですが。パイロットの高梨ひひひさんが家出して行方不明です。多分砂漠のあたりに落ち…いえ、行ったかと。はい、捜索隊をお願いします」

スキップしながらFEG飛行場をあとにしようとして、一井は突然立ち止まった。

「…しまった。自爆装置のテストしてなかったな。…また今度にしよう♪」

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こんばんは、今日のニュースです。
本日未明、数日前から行方不明になっていた高梨ひひひさん(21歳・パイロット)を捜索隊が発見、保護しました。
発見された当時、ひひひさんはかなり衰弱した状態であったものの懸命の救助活動によって一命をとりとめ、病院で治療を受けています。 ひひひさんは大きな風呂敷を所持していましたが本人は「脱出装置」であると主張しており、当局はドラッグを使用した混乱状態での家出である可能性が高いとしています。
それでは次のニュースです。
連日続いている「原素子さん歓迎式典」は…
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●投稿者 : 竜乃麻衣

〜麻衣の日記 ○月×日より〜

『原さんがいらっしゃったぞ〜!』
『ようこそ我が国へ!』

あちこちから歓声が聞こえてくる。
今日はアノ有名人「原素子さん&BALLSさん達」が、このFEGにいらっしゃったそうな。
といっても、実は私はそういう有名人とかにとことん疎い。
おまけについ先日、整備士のきみこさん達に『「BALLS」ってなぁに?』と、すっとぼけた質問したばっかりだし。(でもあれからちゃんと勉強したんだぞー)
政庁の方で歓迎セレモニーをやっているみたいだから、ちょっと顔出してみようかな。
なにせ「国民全員参加!(絶対!)」とかいうお達しが来てたし……。

会場に近づくにつれ、砂塵が花びらに変わっていく。
まず目に映ったのが笑顔全開の是空藩王さま。
(原さんに恋してるって噂、本当だったんだなぁ……)
次に見えたのは、周りに転がってる無数の丸い物体。
あれが「BALLS」か〜。ころころコロコロかわいいかも。
(なんかヒゲ書かれてるのが混じってる……)
視線を上げると、凛とした女性が立っていた。
それが、私の原さんの第一印象。
原さんの立ち振る舞いは、とても堂々としたもので、私はちょっと見とれた。
藩王さまがニコニコしてる。
周りのみんな、というか国全体がニコニコしてる。
つられて私もニコニコ笑顔になる。
成り行き全開で来ちゃったけど、ま、いっか。
原さんの事を知らないのなら、これから知ればいいんだし。
そして、私も挨拶に向かう。ペコリとお辞儀をして…

「ようこそFEGへ!パイロット見習い竜乃麻衣と申します!
これからいろいろとお世話をかけると思いますが、どうぞ宜しくお願いします!」

当分この祝賀ムードは、終らなさそうだね☆
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●投稿者 : かすみ

ある晴れた日の午後。
懐かしいFEGの通りを私は走っていた。

「原さんが来てるんだよ。」

その一言を聞いた瞬間。足は全速力で走り出していた。
目指す方向はただ一つ。あの、人垣に向かって。

藩王の足元にも及ばないだろうが、私は原さんファンなのだ。
「原・ストライク」でお見かけしたときからファンなのだ。

それなのに、ああそれなのに。
やむを得ず試練の旅に出かけている間に
おいでになっているとは!!

人垣を掻き分けて前に進むコツは、人々の足元にある。
それを、様々な場所で学んできた私は、今回も同じ手を使い、
人垣の最前列に出ることに成功。

まず目に入ったのは宙を舞う色とりどりの花びら。
そして何故か紙吹雪。
浮遊する丸い物体――あれが話に聞く「BALLS」に違いない――と、
笑顔満開の是空藩王、そばに居るのは見覚えのある美しい人。

私の前をお通りになるとき、大声で叫んだ。

「ようこそ、原さん。歓迎します!!」

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●投稿者 : 小鳥遊敦@わかば

 政庁城に、けたたましいサイレンが鳴り響く。
「これは訓練ではない。繰り返す、これは訓練ではない!」
「全戦闘員は、現行の作業を放棄。スクランブル体制へ移行せよ」
[I=D各機、いつでも出せるようにしておけ!あと130秒で済ませろ!」
「警備班は総員配置、かかれ!」
「対空監視厳に。カラス一匹見逃すな!」

 政庁城に、怒号と凄まじい緊張が張り詰める。鳴り響くサイレンが示すのはデフコン2―――全軍に臨戦準備の命を発する音だ。自分は政庁城の廊下の端っこを、人にぶつからないようにコソコソ進む。
 喧騒を抜け、目的の部屋のドアの前に立ち、衛兵に用件を伝え、ノック。
「小鳥遊です。失礼いたします」
 広い部屋に大きな机、その上の膨大な書類の束。その向こう、窓を眺めながら紫煙を揺らす男が一人。
「おぅ、小鳥。どーした」
「いえ。大した用事では。きっと落ち着かないかと思いまして、取って置きのハーブティをお持ちしました。香りがとてもいいですよ」
「なんか悪いな。気ぃ使わせちまって」
「いえ。私に出来るのはこんな事ですから。藩王」
 ちらと視界に入った灰皿には、吸殻が山盛り。自分と話していても、チラと窓を見たり。こんなソワソワしてる藩王を見るなぞ、これが最初で最後ではなかろうか。まぁ、無理もない。
据え置きのコンロで湯を沸かし、飲み頃になったお茶を藩王に渡したところで、ノックが響いた。入ってきたのは摂政の真琴さんだ。
「藩王。チャーター機が到着するまで後1時間となりました。出発の準備をして下さい」
「おう、分った!」
そろそろか。
「あ、真琴さん、お疲れ様です。お茶でもどうぞ」
「や、これはどうも」
 そういってカップを一飲みし「ご馳走様でした」と言うと、ツカツカと戻っていった。忙しそうだなぁ。
「では藩王。自分も先に空港へ向かいます」
「おう。また後でな。」
 礼をして部屋を出、己も足早に政庁城を後にする。相変わらずあたりは喧騒と緊張に包まれていた。
 なにせ。国の興亡を握る客人が、やってくるのだ。

 数日前。是空藩王は政庁会議の壇上で、当藩国にさるVIPを迎え、藩国の発展に協力してもらう旨を発表。続けて藩王は
「この客人の死は俺の死も同じ。彼女に万が一のことがあったら国が滅ぶから。そこんとこよろしく」
そうのたまった。
 重大発言にもかかわらず、会議出席者は当然のことと受け流し、つつがなく客人を迎える準備が始まった。

 そして今日はその当日というわけである。客人に万一の事が無いよう、FEGの総力を挙げた警備体制がしかれている。我々政庁のメンバーは警護も兼ね、総出で出迎える手筈だ。自分も末席として列に加わるべく、VIPの降り立つ空港へと急ぐ。


―1時間後、空港―

 政庁のメンバーが整列し見守る中、ついに客人を乗せた輸送機が空港に降り立った。輸送機の搭乗口前に整列し、出迎えの準備。辺りにつられて、自分も緊張してきた。落ち着かず、辺りを見る。
 藩王はもう気が気じゃないようだ。ドアが開いて客人が出てくるのを今か今かと待っている。
 他のメンバーを見渡せば、花束を抱えてる人、サイン色紙を準備してる人、カメラをぶら下げている人…や、すごいね。ハッピにメガホン、巨大な旗で武装してる方いますですよ。気合はいってるなー。…自分手ぶらで来ちゃったけどまずかったね。コレ。後日でも、お茶っ葉セレクトして持っていこうか。

 して。ドアは開き。一人の美女が舞い降りた。
 年のころは自分と同じくらいだろうか。それでも自分より大人びたような、そのくせ子供っぽいような。なんとも艶やかな女性だ。VIPと聞いていたが、つなぎの作業着という実にラフな格好だ。
彼女が足を地に付け、我々を見据えたところで、はい、せーの。
『フィールド・エレメンツ・グローリーへようこそ!原素子さん!!』
総出で唱和し、タイミング良く花火が上がる。(やったら遠くで、小さく、しかもたった一発の妙な花火だった。色の無い、只の爆発みたいな。)
 我々の言葉に、「よろしくね」と、彼女は魅力的な笑顔で答えた。


 かくしてFEGは一つの目的を達し、新たな局面を迎える事となる―――のかな?
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●投稿者 : 山原水鶏

フィールド・エレメンツ・グローリーはお祭りである。祝砲が鳴り響き、真っ青に澄み渡った空には色とりどりの風船や、アドバルーンが浮かんでいる。航空隊はスモークを噴出しつつ、美しく舞い踊っている。地上に目を向ければ、建物という建物には横断幕が張られ、飾られたアイドレスや車が道を行進している。そして歩道にはこのパレードの主役、百年に一人の美貌と謳われる整備の神様、のお顔を拝見したいという野次馬がごった返していた。山原水鶏はその人猫ごみの中を、それこそ泳ぐようにして進んでいた。手には身長ほどはあろう、巨大な花束を抱えている。自分が押しのけているのにもかかわらず、誰かが花束に触れようものなら、噛み付きそうな目で威嚇している。しかしその後理性が働き、柔らかく微笑みながらすみません、と謝っていたので、典雅な物腰は崩れていない。どんな者にもプライドはあるのだ。しかしその日何十度目かの「すみません」を口に出そうとしたとき、先の方で歓声とそれに紛れて、「あの人」の声が微かに聞こえた。その瞬間、山原は跳躍していた。猫としてありえない高さを跳んだ山原に、周りは唖然とする。たった一回のジャンプで2,30メートル離れた「あの人」の前に着地する。群集と同じく唖然とする「あの人」ににっこりと笑いかける。驚くべきことに、まだ優雅な態度のままだ。山原は丁寧にお辞儀し、花束を差し出すと言った。
「原さん、歓迎致します。フィールド・エレメンツ・グローリーへようこそ!」
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●投稿者 : ヴァンダナ

「今回の君に与えられるのは超極秘任務だ。くれぐれも極秘裏に遂行せよ」
 ――事務机に手を組んでバックを太陽に染める偉い人の言葉。

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 FEGの果ての果て。市街地に近いことは近い場所、森に囲まれた丘の上で、一人、コクピットで通信機に耳を傾けていた。
「・・・・・・・・・チャーター機、到着」
 呼吸と共に、各セットアップに入る。
「マスターアーム、ON。FCS、狙撃管制モードにシフト」
 ゆっくりと、鼓動が始まる。
「AWACS、データリンク。兵装の照準、開始」
 モニターに表示されていくシーケンスの文字が、白く踊りだした。
「アールグリーン。これより極秘任務に入る」
 ボイスレコーダーに口頭で記録しながら、ヴァンダナは引き金のあたりを確認した。

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「極秘任務、ですか?」
 その日、藩王室に呼び出されたヴァンダナは、太陽の光でバックがまぶしくその輪郭すら見えない藩王に、ああどこかの司令官に似ていると思った。
「そうだ。このたび我が国、FEGの存続意義でもある重要人物がやってくる。その際の祭に乗じ、特A級の警備体制を行う」
「その重要人物とは?」
 藩王の差し出す写真。それを見て、ヴァンダナは凍った。
「しいては君に、長距離狙撃による重要人物防衛を行ってもらう。異存は?」
「いいえ」
「よし。今回の任務において、電子戦用アメショーを配備する。試作型だが、FEG上空を飛行するAWACSとのデータリンクが可能となっている。その他、FEGの全警備システムにも上位コマンドとしてオーバーライドすることができる。新型のカモフラージュ・アーマーも採用しているため、視覚的探知も難しい。問題なのは、機動力の低下だ。護衛目標を狙う者がいるのなら、構わん、狙撃しろ」
 うわ、なんて荒っぽいと心の中でツッコむ。
「アメショーは第4工房にて最終チェックに入っている。そこで君は搭乗後、トレーラーで移動。後、任務に当たる。なお今回は完全極秘裏だ。FEG上空を監視しているAWACSにも伝えていない。決して誰にも悟られるな。国家の存亡がかかっている任務だ。以上。任務を開始せよ」
 ヴァンダナは敬礼し、藩王の部屋を後にした――

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「なんだこれは? 上位コマンドがオーバーライドしてきたぞ」
 FEG上空、1万メートル。空中管制機のAWACSのコクピットで、オペレーターが息を呑む。
「最優先コマンド・・・私たちが知らされていない作戦か?」
 表示される王猫Zのマスコットに、オペレーターが鼻血を吹いた。
「・・・・・・知らぬが仏、だな。全員、見なかったことにしろ」
「機長、チャンネル3−1にあわせてください! 原さんです!」
「何!? 全員、テレビに注目!」

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「護衛対称を確認。――藩王殿、すっごい嬉しそうだ」
 モニターに写る今回の護衛対象、原素子女史を確認したヴァンダナは、少しだけ照れくさそうに、口を開いた。
「ようこそ、FE――ブバッ!?」
 直後、ヴァンダナの頬が真っ赤になり、天井に頭をぶつける。
 原さんの後ろを隊列を作ってついてくる丸っこいモノ――BALLS。
「ぼ、ぼ、BALLS!?」
 ぶっとんだ。脳内回線が吹き飛ぶ。ついでに言語回路も吹き飛んだ。
 よもやこの世界にやってきてBALLSを見れるとは思いもしなかったのである。
「ごごごご極秘任務続行。対称をさらに付け加える。原素子女史の後方50cmに位置するBALLSも護衛対称に加える」


――かくして、彼の護衛任務は続くのであった。
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●投稿者 : 周船寺竜郎 出演協力 竜乃麻衣

『歓迎SS 前日談より』

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その日は朝から、忙しかった。

FEGにとって、明日は記念すべき一日だったのだ。

「あの人が来る!!」という藩王のひとことから始まった。

原さんとBALLSが来国するその前日、入国したばかりのわかばさんも動員し、国家総出で行われた大イベント、


それは大掃除である。


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「早朝ともなると流石に寒いなー。」

周船寺竜郎はジャージ姿で手をこすり合わせている。砂漠の夜は寒いのだ。

背中に掃除道具を背負った国民が国中を歩き回り、ゴミを拾い、掃除をしながら歩いている。
かなり面白い光景である。

どうやら大掃除は原さんを迎える政庁やアイドレス工場を中心に行われているようだ。


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日が昇り、そろそろ大掃除も終盤にさしかかった頃、

「それにしても原さんってどんな人なんだろうなぁ・・・。」

片手にBALLSに関する本を持った竜乃麻衣は、歩みを止めごみを拾い、そうつぶやいた。

偶然居合わせ、そのつぶやきを聞いた周船寺は、壁面を磨きながら
「え、原さん知らないの?」
と聞いてしまった。

「えーっと、私はそういう有名人とかにとことん疎いもので・・・。」

言われて周船寺、自分も原さんに関する知識が薄いことに気づき、小さく

「そういえば俺もGPMの知識と藩王が片思い中?って噂くらいしか知らないような・・・。」

と、ここで壁面を磨く手が止まる。重大な事実に気づいたのだ。
『ヤバッ!!竜乃さんって藩王のこと・・・。』

「そうなんですよ!!だからどんな人なのか気になって!!」

竜乃、よほど気になるのか背負った大きなかご(ひろったゴミを入れている)揺らしながら、すごい勢いで食いついてくる。

「えぇ〜っと・・・い、いや〜、じつは俺もよく知らないんだよね。ハハハ・・・。」

勢いに押され、つい目をそらして答える周船寺。

「そうなんですか・・・。」
首をひねりながら、う〜ん、いったいどういう人なんだろう。気になるなぁー。とつぶやきながら、手に持った本を広げ、竜乃はその場を後にした。

そして周船寺は、竜乃のかごを背負い本を読みながら歩くその後ろ姿にとある銅像の姿を見た・・・。

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日が昇り、そして沈む。

恐らくこれから数日つづくであろうお祭りのその始まりの日の朝、周船寺は完全に寝坊していた。

慌てて飛び起きた彼がセレモニーに着いたのは、丁度、竜乃が原さんに挨拶をしている所だった。

ニコニコと笑う竜乃を見て、周船寺は自分が3割ほど期待(心配)していたような面白い事態にはなっていないと悟る。

そして彼は残りの7割を安心として、自身も原さんに挨拶しようと輪の名へ足を踏み入れた。

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空は晴れていた、視界の隅に黒い雲が見えたような気がしたが、にゃんにゃんらしく、今はそれを無いものとした。


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●投稿者 : ジャイ

 その日、ついにFEGに入国することになった原素子さん歓迎のため、ジャイは急遽編成されたFEG軍儀仗隊の一人として空港にいた。
『これじゃあ、歓迎の言葉を言う事なんてできないな』
 本当なら、花束なりを持って歓迎の言葉を掛けたいと思っていたのだが、任務として空港にいる以上それもできないだろう。やってもいいが、動き出そうとしたとたん、周りにいる同僚に取り押さえられる可能性大である。普段こういうイベントがあるとロクでもない事しかしない連中は、今回は儀仗隊に組み込まれている。FEG軍上層部も色々考えないといけないので大変である。
『しかし、今回はこちらの作戦勝ちだな』
 原さんが乗った飛行機が空港に着き儀仗隊が整列させられ緊張が儀仗隊を包む。お互いがお互いを牽制し合い動くに動けない状況になった。
 飛行機にタラップがかけられる。既にタラップの下では、是空王が原さんをエスコートするために待機している。
『あ、是空王嬉しそう。いや、幸せなんだな・・・』
 大人しく整列しているジャイは、是空王の顔を見てそう思った。
 原さんをエスコートしている是空王の顔はいつに無く穏やかである。周りに色々言われても結局この人は自分の夢を叶えたのだ。
『おめでとうございます、是空王。そして・・・』
 そして・・・?。
 ジャイの前に是空王と原さんが差し掛かったその瞬間。天井から花束を背負った猫が落ちてきた。そして、”フィールド・エレメンツ・グローリーへようこそ!”と書かれたパラシュートを使い二人の前に着地。優雅にお辞儀をして花束を差し出した。ジャイの同居猫チロであった。
 あまりのことに呆然としている二人に追い討ちをかけるように大声が鳴り響く。
「原さん、フィールド・エレメンツ・グローリーへようこそ!」
 今度はジャイである。これに触発された儀仗隊の面々は、今まで抑えていた反動もあり口々に歓迎の言葉を叫びだした。
 ジャイとチロはこの原さん歓迎イベントを前々から考えていたのだが、ジャイに儀仗隊としての任務が入ったために泣く泣く役割を交代したのである。本当なら天井から落ちてくるのはジャイなのであった。
 いつものチロならばジャイを止めるはずなのだが、今回はノリノリであった。曰く『アクロバットは血が騒ぐニャ』だそうである。結局、似た者同士であった。
「あ、ありがとう?」
 原さんは、ちゃんと花束を受け取ってくれたが、”コイツ本当に猫か?”という目でチロを見ている。
「ニャー」
 またも、優雅にお辞儀をしたチロは、首を捻りジャイを探した。
『任務終了、これより帰還する』
 ジャイとアイコンタクトを交わし、猫なのに脱兎のごとく逃げ出した。チロを捕まえようと右往左往する警備兵たち。
 そのドサクサに紛れジャイも逃げ出そうとしたのだが、顔に笑顔を張り付かせた儀仗隊の隊長に捕まってしまった。
「今のは、君のところの猫だね?」
「はい、いいえ。違います」
「言い訳は、宿舎に帰ってからゆっくり聞いてあげよう」
 なんだか、笑顔が怖い隊長に引きづられて行くジャイはもう一度声を張り上げる。
「原さん、我々はあなたを歓迎いたします!」
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●投稿者 : 左木

原さんのいる方向に向かう大きな花束。
大好きでこうしてお会いすることが出来て
とても嬉しいのに…恥ずかしくて…考えた結果がこれだった。

「ようこそ原素子さん。お会いできて光栄です。
長旅お疲れ様でした。にゃんこじゃらし米でパワー付けてくださいね!」

押し付けるように花束を渡しダッシュで走り去る後ろ姿。
(今はこれが精一杯…)


後日談。BALLSを追い掛け回す左木の姿が各所で目撃される。
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●投稿者 : サーペント

原さんがウチの国に来たね!
原さん?誰?
え?知らないの?ほら、ウチの王様が惚れてる例の・・・
あー、あの人ね、有名なの?
ふ、猫が騒ぐのに理由は要らないわ!
そりゃそうね、そういえばそれに合わせて大交流会が開かれるみたいよ?
あら、噂の美人を見られるかも、行ってみましょうか!

〜ある藩国での街角の会話〜

大交流会〜原さん歓迎式典〜あるいは乱痴気騒ぎ

原さんが来訪されました。
ウチの王様が惚れた人です、という訳でおめでたいのでお祭りです。

歓迎式典が一通り終わった頃王宮の中庭でパーティが開かれます。
原さんを知ってるねこも知らない猫もとりあえず歓迎のあいさつを済ませて後は気楽に無礼講という事で、大国だけに普段交流の無いねこたちとお酒やジュースを酌み交わします。

まあなにかと理由をつけては騒ぐのがねこですから(理由が無くても騒ぎますが)色々と楽しそうです。

静かに酒を酌み交わし談笑する国民、一人黙々と大皿を平らげる大男、暴れるサイボーグ、高笑いする怪人、にこにことみんなを見守る女性、交流会そっちのけで女性を口説いている男、シャンパンを引っ掛けあう男ども、色々な猫がいますがどいつもこいつも楽しそうなのだけは間違いないようです(笑)

まあ何はともあれとりあえずめでたいので道行く皆さんもそうでない方も一言どうぞ〜♪
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●投稿者 : 是空@藩王

 こうして第1回。原さん歓迎会は終った。
 全参加国民ありがとう!

「さて、急いで第2回を企画しないと!!」

 By フィールド・エレメンツ・グローリー藩王@是空とおる

 to be continued

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